“きくちゃん”にnice! [介護]
「pandadaさん!ご利用者の方なんですけど、耳が遠くてまったく話が繋がらないんです。私、大声を出し過ぎて喉が痛くて・・・・・。」
今朝一番にかかってきた、CM(ケアマネージャー)からの悲痛な電話です。
確かにいつもより声が“かれて”います。
よく聞きますと、そのご利用者の方は78歳の独居男性で要介護1、比較的お元気らしいのですが、高度の難聴らしくて、定期的に訪問されているヘルパーさんも意思の疎通を図るのに困っておられるとのことでした。
そしてこの方、TVを見るのが好きで、いつもボリュームを最大限に上げて見ておられ、玄関の「ピンポン♪」も聞こえず、訪問されたヘルパーさんもなかなか家の中に入ることができないそうです。
こういう場合、今までなら補聴器という機器がその解決策として用いられていたのですが、常に耳の中に入れるため違和感もあり、電池が切れると使い物にならず、またハウリングも起こりやすく、何よりも高価な割に耐久性がないのが欠点でした。(高価なもので数十万円するものもあり、少しでも水がかかれば故障します。)
それに、どうしてもよく聞きたいという感情がはたらくために、ボリュームを上げていく傾向があり、そのため難聴がひどくなっていかれる方も多いのです。
そこで最近じわじわ出てきたのが、「骨伝導音声増幅器」なる補聴器です。一般的には骨伝導補聴器と呼ばれています。
ここ2~3年で、いろんな機種が出てきてはおりますが、今までデモンストレーションをしてみて、一番喜ばれ感動されるのがその名も「きくちゃん」という商品です。
これは、付属のヘッドバンドに取り付けた骨伝導スピーカーを額などの骨にあてて音を響かせるものです。
最初、私も耳を塞いで試してみましたが、周りの雑音もほとんどカットされ、驚くほどクリアに聞こえたことを憶えております。
ですから、こういう問合せをいただいたら、まず試しにお使いいただくことにしています。
以前、この機器の開発者の方とお会いした時に聞いたのですが、骨伝導での意思伝達方法というのは、アメリカの特殊野戦部隊の装備として開発されたそうです。
今では警視庁の白バイ隊や自衛隊の装備の一つとしても使用されているとのことです。
私の手元にはいつもデモ器がありますので、早速この方のお宅にお伺いすることにしました。
CMに住所を聞き、お住まいの家を探していますと、すごい音量でTVの音が聞こえてくるお宅がありました。
表札を確かめると間違いありません。
家の前からまず電話をかけ、大きな声で用件を伝え家の中に入れていただきました。
そしてデモンストレーションの開始です。
最初ほとんどの方は、こんなもので聞こえるか!という態度で渋々試されます。
この方も何やら独り言を言いながら、不信な表情で触っておられました。
そして、セッティングして少し離れたところから、ヒソヒソ声で「お父さん、こんにちわ!聞こえますか?」
瞬間、「おっー!?」と一声発せられ、満面の笑顔です。
「きっ、聞こえるでぇ・・・。」
そして、なんと「かっこええか?」
若者がしているヘッドホンのような感覚がしたのでしょう、数分前とは全く別人のような顔つきで笑っておられました。
(お父さん、確かにかっこよく見えたような気がしましたョ。)
このように、軍事技術を介護(福祉)機器に転用されたすばらしい商品がもっと出てくればと思います。
人を殺(あや)めるためにではなく、幸せに暮らしていけるために転用できる技術はまだまだあるはずです。
その技術を開発したり転用したりして、世に出される人や企業にこそ、でっかいnice! をあげたいもんです。
連休騒動記(そのに) [介護]
7月16日、朝4時前起床。
約束の集合時間に遅れてはならぬと気を張って寝たのか寝てないのか、目覚まし時計が鳴る前に飛び起きて洗濯機をまわし、コーヒーを淹れ、バナナをほうばり、そしてタクシーを呼び、集合時間より20分も早く駅に着いてしまいました。
改札口の近くでボーっと立ってると、突如後ろから 「膝カックン」する輩が・・・。
誰かと思って振り向くと、なんとK親分!
「眠たいの~」
そうです。昨夜酔った勢いでK親分に電話をして誘っていたのでした。
しかし、まさか来られるとは・・・・・、なんちゅう付き合いのええおっさん、いやお方でしょう。
そして畳屋のご主人と合流しホームに上がると、いつものメンバーらしい3~4人がぞろぞろと寄ってこられ、挨拶もそこそこに一緒に行くことに。
約1時間ほど電車に揺られ、目的の駅に到着です。
時刻は6時45分、座禅は7時からですから、あと15分くらいしかありません。
みなさん早足でひたすら東福寺をめざします。
そして東福寺の門をくぐり、禅場の前に立たれている雲水にこの日の法話の資料とお経が書かれた用紙をいただき、いよいよ場内へ。
静まりかえり、なにやら懐かしい湿った木の臭いがする場内は、すでに5~60人くらいの方たちが座っておられました。
ご一緒させていただいた方たちから親切に座る場所をすすめていただき、靴下を脱ぎ、手荷物を後ろに置いた途端に雲水の説明が始まりました。
当然、携帯電話はスイッチOFFにしておきます。
足の組み方、両手の形、呼吸の仕方、目線、そして警策(けいさく:雲水が持っている棒)で気を入れてもらう時のタイミングと合掌の仕方などわかりやすく的確に説明されます。
人間そう簡単に「無」の境地になれるわけもなく、雑念が出てきたときは呼吸で気を静めるのがいいようです。
そして「チ~ン」の鐘の音でいよいよ座禅開始です。
しばらくすると、あちこちで「バシッ!」とか「パーン!」という警策で叩かれる音が・・・・・。
なかには「ボテッ!」という鈍く痛そうな音も聞こえてきます。
この音が聞こえるということは「無」になっていない証拠ですね。
そして警策を持った雲水が私の前にこられた時に、一発気を入れていただこうと思い、合掌しました。
教えていただいた作法通りに身体を前に丸め、左右の背筋に「バシッ!バシ!」と2発づつ、計4発!
そしてまた合掌。
これだけで気持ちが安らぎ、来た甲斐があったというものです。
(決して変態ではありませんのであしからず・・・・・)
それからどれくらいたったでしょうか、ぼちぼち背筋が伸びているのか曲がってきているのか、身体が揺れてるような揺れてないような、わからなくなってきたくらいの時に「チーン!」
終了です。
30分の座禅だったみたいです。
そして感傷に浸る(?)間もなく老師の前に集まり、お経の合唱と禅問答のような法話が始まります。
これが約1時間、法話のほうは(シャレではありません)前回の続きらしく、初めて参加した私には難しく、やけに長く感じる時間でしたが、周りのみなさん方は一言も聞き漏らすまいとペンを手に真剣にメモっておられました。
そして最後にお菓子とお茶をいただき、座布団を片付けて終了です。
このまま今日は携帯電話をOFFにしておこうかと思いましたが、何か胸騒ぎがしましたのでONにしてびっくりです。
弟と鬼嫁からすごい数の着信履歴が入っておりました。
これは何か大変なことでもあったのかと(内心びくびくで)、一番最初に着歴のあった弟にかけてみました。
聞いてみると、母が救急車で病院に運ばれたとのこと!
なんで?、どうして?・・・・・、尋ねる質問によくわからない返答で、とりあえず意識はあるとの一言でまずはホッとし、みなさん方の後をついて行くことに。
なんでも特別に通天橋を渡って中に入れていただき、老師の応接室での特別懇話会に参加させていただけるようです。
拝観料を払うところをフリーパスで通していただき、観光客では入れない部屋に入れていただき、常連さん10人ほどで老師を囲んでの約40分ほどのざっくばらんな集まりです。
が、母のことが気になり内容をあまり覚えていないのが残念でなりません。
また羊羹とお抹茶をいただきましたが、これも味を覚えておりません。
そして外に出て、みなさん方と挨拶をし、まっすぐ駅に向かいました。
時刻は10時前、このあと四条に出て祇園祭りの鋒を見たり写真を撮ったりしようと言ってたK親分も、気の毒にも私に気を使っておられるのか一緒に帰ることに。
そして家で車を出し、高速道路を走って、母が運ばれた病院へ。
時刻はまだ12時前・・・・・。
な~んちゅう連休やー!
(引き続き、後記)
みなさん、お騒がせして申し訳ございませんでした。
母は血圧が高く、おまけに三半規管のバランスをくずし、連日根をつめて書道をしたりで、いろんな条件が重なりダウンしたようでした。
本日、主治医に診て頂いたところあまり気にすることもないとのことで、先ほどいつもの元気そうな声でそう電話がありました。
俺の連休はどうなったんやー!
でもよくよく考えたら、私も小さい頃こんな騒動を繰り返して育ててもらったんですよね。
これから恩返しをしていかないといかんのですね。
また警策で性根を叩きなおしてもらわねば・・・・・。
あと、朝早くから起されて1日中母に付きっきりで、そして実家に一晩泊まってくれ、翌朝一番に病院まで付き沿ってくれた弟に感謝です。
おおきに!
それと予定が途中で頓挫してしまい、中途半端な時間に帰ることになってしまったK親分、ごめんなさい。
次回はいろいろ散策しましょう!
結局、写真も3枚ほどしか撮っておらず、見れたもんではありません・・・・・。
とりあえずシャッターを押した内の1枚をせっかくですからアップしときます。
しかし、いいところでしたよ。
今度はゆっくり散策してみようと思っています。
(通天橋)
連休騒動記(そのいち) [介護]
「Pandada(本当は実名で)ちゃん、今晩の晩飯どうするの?」
我が家の鬼嫁がこの連休を利用して(さすが雨女!台風4号の進む方向に)旅行中で私が1人であることを知っていた友人から、親切にも晩御飯のお誘いがありました。
3日連チャンで呑み歩いていましたのでお断りをしようと思いましたが、せっかく心配して電話をかけてくれ、何よりも1人で食べることほど寂しいことはないので出かけることにしました。
メンバーは連絡をくれた1つ年上の友人夫妻と、そのご近所の畳屋さんの年配のご夫婦でした。
場所は彼等の知り合いのスナックで、本来休みの店を合鍵で開け、近所で焼き鳥や寿司を買ってきて、店にあるアルコールも勝手に呑んで唄いまくっていい気分になった頃、突然畳屋のご主人が「明日、座禅組みに行くでー!」
すでに頭はハイになっており調子乗りの私は、時間も場所も聞かずに「一緒に行ってもいいっスか~?」
よく聞けば、ご主人は10年前から毎月1回行っておられるようで、ちょうど翌16日(月)が今月の予定日だったそうです。
「場所は京都の東福寺、時間は7時からやから駅に5時半集合なっ!」
京都はちょうど祇園祭だし、ちょうど昨日買ったカメラも使えるし、「行きます!」
友人のほうは、「私には煩悩がありません。Pandadaちゃんは煩悩の塊りやから行っといで!」ということで不参加とのことです。
しかし時計を見るともうすぐ22時・・・・・、集合場所に行くには4時には起きなくてはなりませんから、また4時間ほどしか寝れません。
それに買ったカメラはまだ箱に入ったままだし、早く帰って1回はシャッターを押さなくては・・・・・。
やっぱり断ろうかと思いましたが、東福寺といえば禅寺でもかなりクラスの高いお寺ですし、老師の法話も聞けるとのことでしたので、それに朝が早いからという軟弱な理由で断るわけにもいきませんし・・・・・。
そして、お互いの携帯電話番号を箸袋に書いて交換し、あと3曲ほど唄って帰宅することにしました。
畳屋のご主人はいつの間にか先にご帰還され、私も一応下調べもしたかったので比較的しっかりした足どりで帰りました。
果たして翌朝、起きることはできるでしょうか?????
明と暗 [介護]
朝早くから、ご紹介をいただいた高齢者施設へ営業に行ってきました。
大阪市内から南大阪方面に、高速道路を使って車で約1時間ほど走ったところです。
目的地に近づくほど、なんとなく懐かしい気持ちになったのは、自転車競技をかじっていた若かりし頃、友人たちと毎週末に練習で走り回っていた場所だったからです。
大阪でありながら、信州を連想させるような景色と適度に続くアップダウンの道があり、ロードの練習には最高のところでした。
当時と比べると道路も整備されて、車の通行量は格段に増えておりましたが、両サイドに広がる畑には、当時のように収穫された新鮮な野菜や果物を「無人販売所」に並べてあり、なぜかほっとしました。
当時は何とも思わなかった田舎の景色ですが、ビルに囲まれた市内に移り住んではや約10年、久しぶりに見る緑の山に見とれてしまい、流れる空気も都会とは全く違う感じで、思わず深呼吸をしてしまいました。
今日はあいにく土砂降りの雨で、車を降りて写真を撮ることもできず、残念ながらとんぼ返りで帰ることになりました。
今日寄せていただいた施設は、昨年末にオープンされた新しい施設ですが、入居希望者が殺到しており、数年待ち状態が続いているとのことでした。
職員の方もたくさんおられ、入居者は至れり尽くせりの対応をしてもらっているようでした。
今後ますます増える高齢者が、安心して手軽に入ることができる施設というのは、本当は国がどんどん建てて弱者を守るべきなのですが、この国の政治家にはその気は全く無く、高齢者ほど住みにくい国になっているような気がします。
生活保護を受け、薄暗い4畳半ほどの部屋にベッドとポータブルトイレを何とか入れて、1日のほとんどを寝たきり状態の人、ブルーシートで公園から働きに出ている人など、信じられない暮らしをしている人の目線で政治をして欲しいものです。
問題になっている省庁で、考えられない額の退職金をもらって悠々自適の老後を過ごしておられる方や、代々続く政治家の家系の中で生活されている人には「普通の暮らし」がわかるはずもないか・・・。
(中之島図書館)
神も仏もあるか! [介護]
先月の11日にアップしました『1日でも永く・・・』で紹介させていただいたお父さんから、朝早く携帯に連絡が入りました。
実は、先週の金曜日の夜にも連絡があり、お母さん(奥さん)がもう永くはないようだからせめて最期は家で・・・、ということで自動採尿器をすぐに欲しいという内容でした。
話によると、もうベッドから降りることもできなくなっておられ、最期はお父さんが自宅で全てを診てやりたいということでした。
しかし、週末の夜遅い時間でもありましたので仕入先とも連絡はとれなくて、すぐには用意することもできず、かかりつけの病院にすぐに行くようにアドバイスをさせていただいておりました。
病院なら用具はすべてそろっていてきちんと診てもらえるし、緊急の処置をしてもらえ何よりも安心です。
お父さんは電話先でかなり悩んでおられましたが、何度も強く病院へ行くことを勧めて了解をしてもらい、その日は電話を切りました。
そして今朝の電話です。
「Sです。早くからすみません。良くしていただきましたが今朝早くに・・・・・、」
あとは嗚咽され、言葉になりません。
私も声が出ず、瞬間に涙が溢れてきてしまい、やっと「残念です・・・」としか言いようがありませんでした。
最期は病院のベッドの上だったそうです。
あれだけ住み慣れた家で、最高のベッドの上で看取ってやりたいというお父さんの願いも届かず、享年60歳だったそうです。
私は知り合ってほぼ1ヶ月でした。
そして先ほど、せっかく購入された高額な電動ベッドや床ずれ予防マットレスなど一式を処分して欲しいとおっしゃいました。
購入されて1ヶ月もたっていませんから、まっさらです。
お父さんが使われたらいいのにと言いましたが、それを見るとお母さんを思い出してしまい、辛くて仕方がないと言われます。
いくら言っても今度は全く聴く耳を持たれず、仕方が無いので知り合いのNPO施設に話をつけることにしました。
そういう団体なら家内も喜ぶやろと了解され、また嗚咽されました。
子供もおらず、2人で精一杯生きてこられたご夫婦に私自身を重ね合わせ、この世に神仏はいないのか、とまた割り切れない気持ちになった1日でした。
お父さんには、しっかり食事をしてお母さんの分まで生きて下さい、としか言いようがなく、「落ち着いたら話でもしに行くから・・・聞いてな・・・」と答えられた後姿に涙が止まりませんでした。
(涙雨)
*寂しく暗い内容になってしまい、申し訳ございませんでした。
どうしても知っていただきたいと思い、アップ致しました。
次回は明るい話題で、と考えております。
3cmからの解放 [介護]
前々回の記事(住み慣れた家で、安全に・・・)で紹介させていただいたお宅の施工に行ってきました。
金額的には段差スロープをそれぞれの敷居に合わせて取り付ければ安く仕上がるのですが、筋力の衰えが著しいお母さんが、自分で車いすに乗ってそれを乗り越えるのは無理であり、提案させていただいた床上げがベストであるとのご判断をいただき、施工に至ったわけです。
下見に寄せていただいてから、ちょうど3週間たったことになります。
この間、CM(ケアマネージャー)に書類(理由書)を作成してもらい、施工前下見写真や申請書類一式を作成して役所に行き、職人さんの予定を調整しながらこの日になりました。
施工は朝9時前からスタートしました。
まず、床上げするDK(台所)に敷いてあるCF(クッションフロアー)をめくり、木材で高さを上げて補強をしていきます。
築30年近くたっているということもあり、ところどころ床にたわみもあり、取り除いたCFを利用しながら高さを調整しながらの取り付けです。
この作業のあとはフローリング材を敷き詰めていきます。
さすがに素人では真似のできない職人芸をみせていただくことになりました。
いかに材料のロスを少なく、たわむことなくきっちりと敷き詰めることができるか、昼食時間になっても手を休めることなく作業は続きます。
そして午後1時すぎ、完成です。
見違えるほどきれいに、そしてスムーズに各部屋に行くことができるようになりました。
ちなみに、お母さんはこの「こまわりくん」に乗って移動されます。
両肘部分を跳ね上げることができ、移乗もスムーズで、6輪ですからその名の通り小回りが利きます。
このお宅は玄関の上がり框(かまち)も半端でなく、こんな昇降機もレンタルでご使用いただいております。
今回の施工は、床上げのほかにトイレに手すりも取り付けさせていただき、改修費用は約16万円でした。
介護保険を利用しますと1割のご負担金で済みますから、約16,000円の出費で3cmから解放されたことになります。
これが安いか高いか、このやり方が正解だったのか・・・・・。
完成した床を見られたお母さんとお父さんの満面の笑顔が、その答えだったと思います。
この日の昼食は2時過ぎになってしまいましたが、いつものように大工屋クンちゃんと、昼食時間も過ぎて閑散とした廻りすし屋で黙々と皿を積み上げる二人でした。
エエ仕事をした後の飯はうまいなあ、クンちゃん!
ビール呑む?
夜、行こ!!
(淀屋橋)
住み慣れた家で、安全に・・・。 [介護]
某大学の付属病院を退院された御家族から連絡が入り、早速必要な車いすや昇降機をお届けしてきました。
必要とされるのはこちらのお母さんで、奇跡的に末期癌から生還されたのですが、重度のリウマチに悩まされておられ、特に下半身が不自由で単独歩行は危険を伴ないます。
日中は、ご主人が介護されておられるのですが、ご主人が用事でご不在の時や夜間トイレに行かれる時などは、車いすで室内を移動したいということでした。
こういう場合、通常の車いすではなくて、小回りの効く6輪タイプのものを届けさせていただいております。
文字通り6輪付いており、その名も「こまわりくん」
(私が付けた名前ではありません。あしからず・・・。)
肘部分も跳ね上げることができるので乗り降りも非常に楽で、早速家の中で試乗され気に入っていただきました。
ところが、このお宅ですが床がフラットではなく、どの部屋に行くのにも段差があります。
その段差なのですが、たった3cm!
しかし、その3cmを車いすに乗って乗り越えるのは非常に力が要るのです。
このお母さん、一生懸命乗り越えようとされますが無理でした。
そこで住宅改修工事を提案させていただくことに・・・。
いつも紹介させていただくように、介護保険を利用すれば20万円までの工事なら、その1割の負担金で施工できるのです。
たとえば、工事総額が10万円なら1万円の出費で済みます。
(9割は管轄の役所からの給付です。)
このお宅ですが、全ての部屋と繋がっているダイニングキッチン(DK)が低くなっていましたので、この床の高さを上げてやればいい訳です。
DK(ダイニングキッチン)から居間への段差
DKからトイレ、浴室への段差
DKから玄関への段差
トイレにも手すりがなく、立ち上がりが大変とのことでしたので、手すりの取り付けも見積りましょうということになりました。
ン十年住み慣れた自宅です。
この先も、ご自宅で安全に住み続けていただけるお手伝いをするのが私たち福祉用具専門相談員の仕事なのです。
帰ってから大工屋クンちゃんと打ち合わせ、CM(ケアマネージャー)に理由書を依頼、種々の書類を作成して役所へ事前申請に走る段取りです。
さあ、どれくらいの金額で施工できて、そして喜んでいただけるでしょうか?
後日お楽しみに!
大阪市役所南側歩道
頼もしく、楽しい友人達。 [介護]
早朝から、施工延期になっていたお宅に手すりの取り付けに走りました。
もちろん、頼みの綱である大工屋“くんちゃん”と一緒です。
現場は、以前このブログの「大工屋クンちゃん、いい仕事しようぜ」で、公開させていただいたお宅です。
本来なら4月中に施工するはずだったのですが、こちらのお父さんの症状が安定せず、入退院を繰り返しておられたため、ずっと延期になっていたのです。
この日もまだ退院はされておられませんでしたが、奥さんがどうしても取り付けて欲しいと連絡してこられました。
退院されて自宅に帰られた時に、少しでも安全にしておきたいとのことでしたので、日時を調整して寄せていただきました。
ほんとうはお父さん本人に立ち会っていただき、動作を見ながら最終的に取り付け位置を決めていくのですが、今回は仕方ありません。
まず、すべての取り付け場所を奥さんと共に、取り付け位置や高さなどを確認していただいた上で施工開始です。
“くんちゃん”は、いつものように工具やクギに話しかけながら黙々とこなしていきます。
現場では、当初予定していた取り付け方を多少変更せざるを得ない場合がでてきます。
そのような時には施工の手を止め、予定価格を変えずに最良の方法を考え、ご家族に説明をし納得いていただいてから施工しなければなりません。
幸いにも今回の現場では予定通り順調にこなした・・・、はずでしたが・・・・。
今回数ヶ所あった取り付け場所のうちの施工前と後の写真を2~3アップします。
(施工前)
(施工後)
(施工前)
(施工後)
(施工前)
(施工後)
すべて壁の中には芯材が入っておらず、“くんちゃん”苦心の作です。
あと数ヶ所もすべて完璧に取り付け、お昼前には完了、「またいい仕事できたなあ。昼何食べる?」と二人メニューを次から次へ出し合いながら、次の下見現場へ車を走らせました。
外でのすべての仕事を終え、事務所に帰って写真を加工処理し、役所への完了届けやCM(ケアマネ)さんへの報告書類も作成し終わり、さあ“夜の徘徊”に行こうとしたその時に、携帯電話が・・・・・・・。
朝一番に施工させていただいたお宅の奥さんからです。
「お風呂の扉が閉まらないのですが・・・・・・・・・・。」
写真でもおわかりのように扉は内開きで、二人は何も考えずに取り付けてしまったわけです。
すぐにクンちゃんに連絡、再度急行することに・・・・・。
この日の走行距離ですが、160Kmほどでした・・・・・。それも軽四で・・・。
事務所にたどり着くと、今度は携帯メールです。
「美味しい餃子出来たよ、食べにおいで」と絵文字入りで届いています。
台湾から姉妹で日本に来てがんばっている呑み屋のチーママ「Fちゃん」からです。
そういえばこの前呑みに行った時に、台湾の料理を食べさせてくれる約束をしていたことを思い出しました。
餃子は水餃子で、皮は台湾から取り寄せたモチモチしたもので、中身は豚のミンチとニラのみ。
それを「Fちゃん」特製のタレでいただきます。
ほかにも、台湾では餃子と一緒に食べるらしいスープ(名前忘れた)
それに、マーボー豆腐
でかい春巻き
あと、台湾から取り寄せた麺で作るラーメンや、冷たいデザート(クラゲ入り)などなど、手際よく次から次に出してくれました。
作りながら、そして食べながら、台湾の話も聞けて、日本にいながらにして台湾を満喫した夜でした。
「Fちゃん」謝謝!ごちそうさまでした!
1日でも永く・・・。 [介護]
「Pベッドさんのショールームで見てきたんだけど、購入はそちらでということなので電話しました。」
今朝一番にかかってきた電話です。
介護用ベッドは、介護保険を利用してのレンタルが主流で、購入される方はほとんどいらっしゃいません。
購入となりますと平均50万円前後はしますし、レンタルなら月々約1500円くらいの料金で済むからです。
そのことを伝えましたが、あくまで購入されるとのことでした。
それも最新の一番いいモデルNo.をおっしゃいます。
定価合計にすれば、おおよそ70万円くらいはします。
こういう場合、たいてい強烈に値切られるのが常なのですが、この方は「3割は引いてくれるやろ!」と、ご自分で計算されており、それ以上のしつこい価格交渉はありませんでした。
ただ、納品をひどく急いでおられ、明日にでも届けて欲しいとのことでした。
ご自宅の住所を聞けば、私の事務所から自転車ですぐのところでしたので、早急に見積書を作成し、帰ってきたわが愛車「リッチー号」で事務所を飛び出しました。
ご自宅では、要介護3の奥さんがお休みになられているので、近所の喫茶店で会いましょうということでした。
(造幣局)
事務所から数分で『造幣局』の前に出ます。
その前を過ぎると大川(淀川)にかかる桜ノ宮橋(通称銀橋)があり、私はここから見る景色が好きで、遊覧船でも通ればいいのになあと思ってふと下を見ると・・・・・、
うまい具合いに遊覧船が天満橋のほうへ・・・・・。
正面の日本経済新聞社の屋上からは、天神祭りの模様が毎年TV放送されています。
少し左斜め前を見ますと、OBP(大阪ビジネスパーク)のビルが見えます。
この銀橋を渡れば北区から都島区となり、目的の喫茶店があります。
黒の野球帽をかぶったご主人は先に喫茶店の前で待っておられ、私は自転車で行くことを伝えておりましたので、すぐに「pandadaさんですね?」と声をかけてこられました。
店内で座るなり、金額よりも納期をお尋ねになられ、なんとか月曜日にはお届けできる旨を伝えますとホッとされ、急に温和な顔になられたようでした。
再度レンタルをお薦めしましたが、ご主人は言いにくそうに・・・・・、
「家内が末期の肺がんで・・・、もう永くはないだろうから・・・・・、最期くらいは新しいベッドで寝かせてやろうと思って・・・・・。」
帽子を目深にかぶり、少しうつむき加減でそこまで言われると、私の目を見て、「子供もおらんから・・・、寂しくなるかなあ・・・・・。」と無理につくったような笑い顔でおっしゃいました。
ご主人の両目は真っ赤で、私は正視することができずに思わず目をそらせてしまいました。
出てきたコーヒーもそこそこに喫茶店を後にしましたが、余命がわかった連れ合いと過ごすご主人の辛さを思うと、たまらなく切なくなってきました。
ご夫婦が、なんとか1ヶ月でも2ヶ月でも一緒にいられるように願わずにはいられません。
気持ちとは裏腹の、昨日とはうって変わって晴れ渡った青空が少し気持ちを和らげてくれましたが、厳しい現実を思い知らされた帰り道でした。
銀橋から、OAP(大阪アメニティパーク)と帝国ホテル
そんなアホな!(パート2) [介護]
1ヶ月ほど前に、“迷”コンビの大工屋くんちゃんと下見をして見積らせていただいた少し遠方のお宅から、改修工事のGOサインが出ました。
一度は、音が出るのは困る、と訳のわからん理由で立ち消えになった現場ですが、やはりトイレの出入りや便座の立ち座りの際に手すりが必要ということから、取付けを決断されたようでした。
このお宅は階段にも滑り止め加工を施す施工も提案させていただいております。
念のため、前日の夜に工事の方法や音の話も再度説明し、なんとかご納得をいただきました。
大工屋くんちゃんとは施工日程の調整を打ち合わせ、事前準備を着々と進めていきます。
役所への事前申請に必要な見積り明細や図面、施工前写真はすでに用意していましたが、CM(ケアマネージャー)が作成する理由書はまだでしたので、急遽作成をお願いしました。
この理由書も、最近はかなり詳細に書かなくてはならず、忙しいCMにお願いするのは正直かなり気をつかいます。
遠方ですので朝8時前に事務所を出て、9時前にCMの事務所のある病院へ立ち寄って理由書をもらい受け、途中のコンビニでコピーをとり、9時半ごろ役所に到着しましたが、駐車場に入る車はすでに数台並んでいました。
介護保険課に行くと、ここでも数人の方が順番を待っておられます。
介護保険が導入された6年前より、この課に来られる方の数はあきらかに増えております。
やっと私の番になり、書類を順に説明し、施工承諾の判をもらいました。
ここまでくれば、あとはしっかりとした工事をして、ご家族みんなに喜んでいただくのを待つばかりです。
事務所へ戻る道とは逆方向でしたが、取り急ぎご依頼先に施工承諾が出たことを報告し、日程の話もと思い、お宅に向かいました。
ピンポンを鳴らして出てこられたのは、最初に音が出る工事は困ると言われ、納得していただいた(はずの)息子さんでした。
そして扉が開いて・・・、挨拶もしないうちに・・・・・、
「やっぱり音が出ると困るから、工事はやめときます。」
一瞬言葉を失った私は・・・・・、
そんなアホな!
ここまでくるのに、どれだけの人の労力と時間と経費を使ったことか!
何年も、そして何十件も改修工事をさせていただいて、こんな話は始めてです。
そんなアホな!
もう一言述べさせていただき、事務所に帰りました。
仕事ですからいろんなことはありますけど・・・・・。
当然この日は全く仕事に力が入らず、人間不信に陥った1日でした・・・・・。
なんか、悪いことでも・・・・・した?(自問自答)
(桜ノ宮:小雨の降る源八橋から)