こんなん知ってます?(バスグリップ編) [介護]
我が家から自転車で5分ほどのマンションに、一人でお住まいの80歳になるお父さんから、元気のない声で電話がありました。
数年前に浴室に手すりを取り付けたい、ということで訪問させていただいたことのあるお宅の方です。
問題の浴室ですが、非常に古いマンションのユニットバスで、壁面が薄っぺらくて内側に柱芯もなく、また賃貸のために大家さんの承諾書も取り難いということでしたので工事を見送った経緯があります。
その時は浴槽台を置き、それを踏み台にして出入りをするようにしていただいていたのですが、ほんの2~3年で下肢筋力が著しく衰えたようで、ふらつきがひどくなってきているようです。
いつぞやのブログで紹介をさせていただいた『バスボード』をチャリンコの前カゴに放り込み、早速訪問したのですが・・・・・。
残念!浴槽が小さくてボードを置くと足を出し入れするスペースがほとんどとれません。
「お父さん、いつもどんなふうにして出入りしてるの?」
聞いてみますと、前かがみになり、浴槽の縁を両手で持ってそろりと右足から入られます。
「これ(浴槽の縁)が滑るから怖いねん。」
確かに、若い人でも何気なく持つと滑ることがあるし、高齢者の方で握力も低下していますからより滑りやすく、前かがみの姿勢ですので非常に危険です。
「昼からもう一回くるから・・・」
と言い残し、いつもお付き合いをいただいている福祉用具の問屋さんに走りました。
ちょっとピンときた用具が浮かびましたので、デモ機があれば試してもらえると思ったからです。
で、思っていたものがありましたのでそれをお借りし、再びお父さんの待つマンションへ・・・。
入浴グリップとかバスグリップという名称で出ている福祉用具です。
数メーカーがよく似たものを出しています。
見ていただいたのは、湾曲した形状の浴槽縁にも対応しますし、内側にもグリップを取り付けられます。
何よりも前かがみになる角度がかなり緩和され、楽な姿勢で出入りできるのです。
これは税込み21,000円、介護認定を受けられていますので2,100円の出費で購入していただけます。
今回は、毎日の入浴が楽しみだからすぐにでも欲しいとのことでしたので、償還払い方式で購入をしていただくことになりました。
大阪市独自の給付券方式(最初に申請して審査され、後日給付券が送られ、その後に用具をお届けして1割分だけをいただき、9割分は翌月に我々業者に役所から振込み)は手間と時間がかかるし、何よりも全額入金になるのが遅いことをお父さんが気の毒に思ってくれたわけです。
償還払いでしたら、用具をお届けした時に全額をいただき、申請後に9割分を役所からご利用者の口座に入金されますので非常にスムーズですし、何よりも業者としては助かります。
デモ機を見ていただいたり、役所への申請を代行したり、結構手間取りますが、ご自宅で事故無く、笑顔で生活していただく一助となっていると思えば、チャリンコのペダルを踏む足も軽く感じられます。
でも、お風呂やトイレで悩んでいる人の多いこと、自宅内での事故が最も多いこともよくわかります。
みなさん、事故になる前にチェックして、賢く介護保険を利用しましょう!
バスボードで安全に! [介護]
身寄りの無い1人暮らしで生活保護を受けておられる方を、自力で安全にお風呂に入らせてあげたいから相談に乗ってあげて、というCM(ケアマネージャー)からの電話がありました。
この方は65歳・・・、まだお若いのに脳梗塞で倒れられて下肢に障害をもたれてしまわれたそうです。
CMにより詳しく尋ねてみますと、お住まいは相当古いマンションで、浴槽が深くて浴槽壁もかなり高いとのこと、早速メジャーを持ってチャリンコにまたがり出動です。
拝見させてもらいますと、情報通りの浴槽で、壁に手すりも無く、この方の現在の残存身体能力から考えても、一人でこの浴槽に出入りすることはかなり危険です。
国や市町村に有り余るお金があれば、浴室をバリアフリーに近い形に改修してあげればいいのでしょうが、現状のこの国ではまず無理な話です。
(自己負担も苦にならないような裕福で持ち家の方であれば問題はないのですが・・・)
また借家ということもあり、大家さんの承諾やそのための書類作成など煩雑なことを嫌われましたので今回は用具の利用で考えてみることに・・・。
さて改修工事以外の方法で、この方が自力で安全に入浴できるには?
バスボードという介護用品があります。
事務所にあったサンプルを取りに帰って再び訪問し、浴槽にまたげてみますとぴったりです。
これなら浴槽をまたぐことなく、一旦このボードに座って入ったり出たりが可能です。
実際に私がデモンストレーションしてみてから試してもらいました。
両下肢が不安定ですので最初は恐々として試されましたが、2~3回その動作を繰り返すことでコツをつかまれたようで、これでいってみようということになりました。
このボードは2万円ほどしますが、当然介護認定を受けておられますので(要介護2)、1割の自己負担(約2千円)で購入することができます。
(この方は生活保護を受けておられますので負担免除です。)
これだけ読まれた方は簡単な話と思われるでしょうが、ここからが我々介護保険事業者の手間のかかる作業となります。
お住まいの地区の役所の介護保険課に出す申請書類一式の作成と、福祉事務所に出す書類を作成し、提出することが必要なのです。
我々日本人だけではないでしょうが、安全に入浴したいというのは人間本来の願望なのでしょう、結構相談の多い事柄です。
また浴室は転倒事故などの多い場所ですので特に気を使い、いろんな角度から考えるように注意しています。
でも、今後この方が安全に入浴されることを思えば楽しい書類作成です。
Aさん、もうすぐ安全にゆっくり入浴ができますよ~。
古新聞に包んだ気持ち [介護]
81歳の男性で要介護5、最近はベッドから降りることもままならない寝たきりの生活保護を受けておられる独居高齢者です。
日中でもまったく陽射しの入らない、トイレの臭いがする薄暗い4畳半にベッドを置き、小さなテレビを見ながら1日を過ごされています。
この方ですが、最近は大体月に1回私に電話をしてこられます。
少し嚥下障害もあるためか話される言葉がわかりにくく、最初の頃はほとんど聞き取れなかったのですが、最近では大体の内容がわかるようになってきました。
電話の内容は、『ベッドが傾いてきている』や『リモコン操作をすると音が鳴る』、『車いすの足置きが下がっている』など、大抵ご利用いただいている福祉用具に関することです。
事故に繋がるといけませんので、その都度車を走らせ尋ねさせてもらいます。
私が動けない時は卸し元のサービスマンに走ってもらったりするのですが、いつもまったく異常はありません。
昨日も、先日取り替えた車いすがおかしいとのことでしたので見に行ってきました。
やはりどこも異常はなく、説明すると素直に理解していただけます。
そして話はご自分の身体のことや壁に飾られた昔撮った写真のこと等などで、やっぱり寂しいんだろうなあと思いつつ、私も次の仕事がありますので風邪に気をつけるよう、そしてしっかり食べるように伝えて家を後にすることにしました。
その時です。
『Pandadaさん、これ持って行き!』
痩せられた腕を伸ばして、古い英字新聞に巻かれたものを私に差し出されました。
新聞紙で巻かれたものといえばピンときます。
そうです・・・、
事務所に帰って開けてみると、この方と同じように痩せ細ったサツマイモ(焼き芋)でした。
私にあげようときれいに包んで待っていてくれたのです。
こういうことは本当なら丁寧にお断りして帰るのですが、今回はお断りすると気持ちを削いでしまいそうな感じがしましたので喜んでいただくことにしました。
形は良くなかったですが、この方の気持ちが入っていたのか、甘いイモでした。
夕方遅く、福祉事務所から電話がありました。
先日の19歳の女性宅の改修工事の件でした。
身障者手帳を申請してもらい、障害者給付による助成金で改修する方向でも考えてもらえるようです。
まだかなり時間がかかりますが、一歩前進です!
節分の日に思ったこと。 [介護]
昨年末に年を越せるかどうか、という90歳の寝たきり状態の方の担当CM(ケアマネージャー)から連絡が入りました。
嫌な予感がしましたが、レンタルでご利用いただいているベッドから最近よく落ちてしまうとのことでした。
この方は認知症もかなり進んでおられ、ここ1年くらいは下肢筋力の低下も著しい寝たきりで、食も細くて明日を迎えられるかどうかもわからないような状態の方でした。
ですからなんで?と思い良く聞いてみますと、奇跡的な回復力で動けるようになられ、自分でベッドから降りようとされることもあり、サイドレール(ベッド柵)の隙間からズリ落ちるとのことでした。
お届けさせていただいている商品の明細をチェックしてみますと、サイドレールは短いタイプをご利用いただいており、これを長いタイプに交換すれば隙間もなくなり安全になるでしょうということで早速交換に寄せていただき対処してきました。
訪問させていただき驚いたのは、昨年末にお会いした時よりも本当に元気になられていたことです。
ご家族は商売をされていますので、介護する時間はほとんど割くことができず、日中はヘルパー派遣や訪問看護を上手にご利用になっておられます。
このような、介護保険をご利用なってのサービスは今では当たり前のようになっているのですが、今回の方のような回復力を目の当たりにすることはそんなにありません。
ご家族と話をしていてわかったことですが、CMやヘルパーさん、それに訪問看護師の方たちがこの方に接する時には、たえず大きな声で昔の話や趣味趣向の話などを話題に“声掛け”をされており、また食事内容もかなり改善されたのが回復の大きな要因のようでした。
最近では、昔よく吸っておられた煙草も吸わせてあげ、本当においしそうに吸われているとのことです。
実際に認知症の方の増減数を調べてみたわけではありませんが、仕事で日々接するご家族や、私の友人のまわりにはかなりの数の方がいらっしゃいますし、どんどん増えていってるような感じもしております。
家族の方が認知症になられると大変なことに間違いありませんが、接する方たちが状態を理解され、臨床経験豊富なCMの指導の下にチームとして対応することで、ご家庭が明るい雰囲気になるという一例をみさせていただいた半日でした。
医学の更なる進歩を望むと同時に、マンパワーの必要性を実感したしだいです。
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ところで今日は節分です。
小さい頃、生年月日を書いた半紙に数えの歳の数の豆を包み、夜近所の八幡さん(八幡宮)に奉納に行き、家に帰ってから幼稚園で作った自作の鬼の面を被って、大きな声で「鬼は~外ー!福は~内ー!」と豆撒きをしたことを思い出しました。
そして畳の上に散らばった豆を弟と争って歳の数だけ拾い食いしたものです。
(いつごろまでやっていたのかなあ・・・・・。)
可笑しかったのは、80を越える歳だった祖母が、「そんなに食べれん・・・。」と言ったのを聞いた時でした。
そういえば、この日は住んでいた長屋の玄関の柱の割れ目に、母がイワシの頭を割り箸に刺して突き刺していたことも思い出しました。
鬼(厄)を追い払うという厄除けのためだったようですが、そのような風景を長いこと見ていません。
今もそのような風景を見られるところはあるのでしょうか?
何はともあれ、今日でひとつの節目が変わります。
明日から、また新たな気持ちで笑っていきましょう!
ボチボチとね!
さあ!とりあえず、南南東を向いて巻き寿司でもほおばりましょうか!
この国のこれからは・・・? [介護]
新年早々、風邪のせいか、あるいは年末年始にかけてのはしゃぎ過ぎのせいか、のどが痛くて首から上が熱っぽく、つい先日まで覇気なく過ごす毎日でした。
やはりン歳を越えると年々回復力が落ちてきているようで、いつまでも若いと油断していてはいけないことをまた学習した次第です。
昨日やっと体調が戻った感じがしましたので、朝からなまった身体を絞りに、というよりは昨夜呑んだアルコールを出しに、久しぶりにジムへ行くことにしました。
約1kgほど体重を落とし、すっきりしてジムを出た途端にポケットに入れていた携帯電話が鳴り出しました。
去年から参加させていただいている会で、しょっちゅうお会いする大会社の顧問の方からです。
しょっちゅうと言いましても、そんなに親しく話をさせていただいたこともありませんでしたので、突然の電話にびっくりです。
よく聞いてみますと、永年独居されているお義母さんの認知症の症状が激しくなり、とても一人での生活は無理で、かといって同居しての介護も不可能ということで、グループホームへの入所を決断されたようでした。
昨日そのお義母さんを連れて、近所にある病院併設のグループホームに面接に行かれたそうなのですが、たまたま脚の調子が悪くて車いすに乗って行ったのがまずかったのか、自分で歩けない方はちょっと・・・・・と言われ、さてどうしたものかと私に問い合わせてこられた訳です。
民間経営のこのような施設は、大概最初に面接があり(云わば利用希望者を選べる訳で)、当然元気で介助手間が少なくて済む方に入居してもらうほうがビジネスになります。
どんな方でもOKですという所もありますが、まず空きが無いのが現状です。
話をしていく中で、ご自分が顧問をされている会社の系列でたくさんの施設があり、一言でねじ込むことも可能な施設があるのにも係わらず、特権を行使して無理やりねじ込むことを良しとされない潔いお考えに感動してしまいました。
そして、私が何処か知っている(係わっている)良い施設がないか、またもっと良い方策はないか、と相談してこられたのです。
結局、担当CM(ケアマネージャー)が一番情報を持っているでしょうから、まずCMに相談されては如何でしょうかということしか言えず、というのも現在は地域密着型での介護方針が打ち出されているため他市になりますといろいろと制約があり、やはり地元で情報を得て動くのが最適だと思ったからです。
介護保険はあくまでも利用者本位の法律ですから、何を決めるにしても利用者もしくはその家族の考えが尊重されるということも申し添えておきました。
ですからCMや我々サービス事業者も、利用者の一言でチェンジされてしまう怖さもある訳です。
最近このような問合せを受けることが多く、高齢化のスピードが速まってきていることを実感すると同時に、国はもちろんのこと各メディアももっと頻繁にこのような現状と情報を広報すべきだと強く思いました。
インド洋での給油活動も大事なのはわかりますが、まずこの国に住まう一人ひとりが安心して暮らせる環境の整備に、もう少し予算をつぎ込んでいただければと思わずにいられません。
それでは大阪府知事選挙に、清き一票を投じてくることにします。
*新年早々、超まじめで硬い内容で申し訳ございません・・・・・。
「いつまでおめでとうの画面のままやっ!」ってたくさんの方からお叱りを受け
思わずPCの前で緊張してアップしました。(汗)
ボチボチいきます・・・・・。(謝)
(老木が見せる命)
こんな施工も・・・。そしてみなさん、ありがとう! [介護]
このブログで、過去何度か介護保険を利用した住宅改修工事の記事をアップさせていただきましたが、今回はあまり知られていない施工をしてきました。
住宅改修工事では、トイレや浴室などへの手すりの取り付けや床段差の解消工事が多いのですが、扉の取替えという項目も支援の対象となっております。
身体の移動を伴なう開き戸を引き戸や折り戸等に変更したりすることが認められているのです。
今回のケースは、90歳で右片麻痺の女性宅でした。
寝室からリビングを通りトイレへという動線なのですが、トイレのドアが手前に引いて開けなければならない開き戸でした。
ですから、一旦トイレを通り越してから開けるか、手前でドアノブを持ってバックしながら開けるという動作となり、左手に杖を持ったこの方にとってトイレに行くことは大変な作業となっておりました。
担当のCM(ケアマネージャー)からの相談でこの工事項目の話をさせていただき、施工前の写真や平面図・見積書を持って役所(介護保険課)に代行申請に行きましたところ、工事OKの通知がきましたので施工にかからせていただいた次第です。
これが施工前の写真で、手前がリビングです。
障害のある方にはつらい開け閉めになるのがお分かりになると思います。
まだ新築間もないマンションでしたが事故があっては大変ですので、同居されているご家族(娘さん)のご理解も得ての施工となりました。
開きの方向を変えて付け替えた写真です。(恥ずかしそうに写っているのが、いつもの迷、いや名大工の通称大工屋クンちゃんです。)
当然、何箇所かビス穴がありましたが、クンちゃん得意のコーキングできれいな仕上がりとなり、違和感なく開閉ができました。
今回はトイレ内壁面にL型手すりも取り付けて立ち上がりの安全性も高め、介護保険の対象外ですがライトもセンサーライトに変更いたしました。
スイッチに触ることなく、扉を開けた瞬間にライトが点きますので、スムーズな動作で出入りが可能となり、ご家族にも喜んでいただくことができました。
以上簡単そうな話なのですが、施工前の下見とご家族への説明、何よりも役所の担当者への事前申請説明にかなりの時間を費やしたことを申し添えておきます。
と言うのも、このような施工をよく知らない職員の方も多く、その職場にいる限りはしっかりと勉強しておいて欲しいといつも思うのです。
さあ、これから施工後の写真と事後の書類一式を作成して、明日また役所へ行く段取りをするとしますか・・・・・。
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気がつけば、友人のRanger(http://blog.so-net.ne.jp/model-k/)さんに無理やり(?)始めさせられたこのブログですが、ちょうど1年たちました。
たくさんの方たちから楽しいコメントをいただき、それを励みになんとか続けさせていただいております。(たまに電話をいただく方もいますが・・・)
記事内容が少しでもみなさんの記憶に残り、いつかお役に立てればと思いながらアップさせていただいております。(酒の話が多すぎるとの批判もありますが・・・。)
そんな昨今、ハイマンさん(http://blog.so-net.ne.jp/taiheyo_racing_saitama/)からこんな贈り物が届きました。
ご自分で撮られた、ものすごくきれいな風景写真です。(これは一部です。)
高齢や身体に障害を持つために外に出ることができない方に差し上げて下さいということでした。
そして、こんな文章も添えていただいておりました。
ブログ、あまりアップできませんでしたが、1年続けてよかったと心から思いました。
こんなにすばらしい友人(ハイマンさん)もできたし・・・、すべてはRangerさんのおかげかな。
Rangerさん!早く病気を治して、退院祝いは例のおばちゃん食堂で、おでんのスジで一杯やろな!!
それともOの餃子で?(K親分も呼ばんと怒るやろなあ)
ハイマンさんもおいでネ!
みなさん!やめるまで(?)アップしますのでこれからもよろしくネ!!
常に弱者の眼で! [介護]
2年ほど前に脳血管疾患(脳梗塞)で倒れられ、左片麻痺の障害を負われた54歳の男性がいらっしゃいます。
介護保険では、このような40歳以上64歳までの医療保険加入者の方が、老化に起因する特定疾病で要介護(要支援)状態になった場合もサービスを受けられます。
今回の方はリハビリを続けられてはおられるのですが、どうしても動作に時間がかかってしまうことで、ついつい家に閉じこもりがちになっておられました。
先日、ご自分よりもはるかに高齢の方が電動カートに乗っておられるのを見られ、乗りたそうな雰囲気をCM(ケアマネージャー)が察知されて私に連絡が入りました。
年齢もお若く、以前は車の運転もされていたようですから、簡単に操作はできると思いましたが、ご自宅の周辺は道も狭く、近所には波打った大きな踏切もあり、まずデモをしてみましょうということでこの日をむかえました。
前日までの天候とはうって変わって快晴で暖かい朝になり、絶好の試乗会日で、この方は朝早くから起きられて私が着くのを窓からずっと見ておられたようでした。
メーカーサービスマンから一通りの説明を受けてから、CMも付き添ってそろそろと出発をしましたが、歩く早さでは物足りないのかスピードを上げたくてうずうずされておられます。
そして問題の踏み切り前に到着、再度操作の説明を受けます。
踏み切り内は道路が波打っており、線路の隙間にタイヤが挟まってしまう危険もありますので、線路に対しては直角に若干スピードを上げて行きましょうということで緊張の一瞬です。
電車が通過して遮断機が上がり、自転車や車が一気に渡りきってから踏切内へ侵入します。
車でも結構バウンドする踏み切りでしたがスムーズに渡ることができました。
そして違う踏み切りでもチェックしてみることに・・・・・。
こちらの踏み切りは少し道幅が狭いのですが、通行量も少なく一方通行ですので先ほどの踏切よりも安全であるということで、なるべくならこちらを渡りましょうという意見の一致でご納得です。
約40分ほどの試乗でしたが上手に運転され、これからは外に出て行く楽しみができたと、試乗前とは別人のような顔で話されたのが印象的でした。
ただ今回も思ったのですが、いずこの道路も車が通るためにあるような作りで、社会的弱者には本当に優しくないむしろ危険なところが多いようです。
歩道には自転車が、あるいは粗大ゴミが放置してあったり、まったく歩道がない道であったり、やはり行政側はもちろん健常者もこのような弱者の立場で見ていないことがよくわかります。
そしてご自宅に到着、いよいよ「車庫入れ」です。
車庫はありませんので、自宅入口の前の道ぎりぎりに幅寄せして駐車しなければなりません。
しかしかつて大型免許もお持ちになり、その運転経験もあるこの方は難なくバックで一発駐車完了でした。
これで今後のリハビリにも積極的に行かれるでしょうし、何よりも外の空気を肌で感じられ生活に張りが出てくると思われます。
ただ、慣れた頃が一番事故が多いということを言い置いて次の現場に向かいました。
Iさん、くれぐれも気をつけて運転して下さいネ!!
そしてリハビリがんばって下さいね!!
お風呂に入れてあげたい!(後編) [介護]
末期がんから生還された奥様を、どうしても自宅のお風呂に入れてやりたいというお父さんの願いをかなえてあげることができるかどうか、いよいよその日がやってきました。
数年前にリフォームされたユニットバスの扉に貼ってあったシールから、メーカーに浴槽品番などを問合せ、同一メーカーのオプション品(介護用機器)が使用できることがわかったのですが、壁面に取り付けられた手すりや蛇口の位置で、かえって使いにくい恐れがありましたので、デモンストレーションをしてみることにしたわけです。
介護用品はいろんな条件で、必ずしもすべてのケースにうまく当てはまるということは考えられません。
かなり手間なことですが、私はできるかぎりデモをして納得していただいてからご利用いただくことにしております。
取り付けているのは、TOTOの「バスリフト」という商品で、介護保険による「移動用リフト」という範疇でレンタルサービスの適用が認められております。
これは、身体を吊り上げるか体重を支える構造を有するもので、自力での移動が困難な者の移動を補助する機能を有するもの、と規程された機器です。
特殊な工具などは必要なく、ドライバー一本で取り付けることができ、充電式のバッテリーで可動します。
機器は、ものの10分ほどで取り付けが終わり、いよいよお母さんに実際に試していただくことにしました。
ベッドから浴室用の車いす(シャワーキャリー)に乗り、お父さんに介助されて浴室へ、そして恐る恐る移乗されました。
お母さんはほとんど介助なしで上手に座面に座られ、お父さんがリモコンのボタンを押されます。
「おおー!下がったぁー!」
一番下まで下がったのを確認してから、今度は上がるボタンです。
「うわー!楽チン、楽チン!」
お母さんは、子供が乗り物に乗って喜ぶような楽しそうな声で歓声をあげられました。
続いて浴槽から出る動作の確認を、と言いますと・・・、「もう降りるの??」
横に置いたシャワーキャリーとの高さが若干違いますので、移乗がそんなにスムーズではありませんが、これは慣れで解消できると思います。
「これからの季節、これでゆっくり温もれる。pandadaさん、おおきに!」
お父さんが満面の笑みでおっしゃいました。
そして、最高にうれしい言葉もかけてくださいました。
「あなたが昨年末、家内の病室で必ず良くなるって言ってくれた一言が力になったョ。これからもよろしくネ!」
いえいえ、お父さん、ここまで回復されたのはお父さんの「介護力」ですョ。
今後は転倒などの怪我に気をつけて、いつまでも仲良くお過ごし下さいネ!
連日いろんなご家族に接しますが、今回ほど「介護力」という言葉の意味を痛感させられたケースは初めてでした。
身近な人(家族)の心からの言葉と介助が、人間の命を延ばすことができるのです。
これからもたくさんのご家族に会うことでしょうが、今回の経験はその方々にもお伝えし、みなさんが笑顔になっていただけるようなお手伝いしていくことを再確認した半日でした。
ちなみに、この機器ですが、介護保険を利用してのレンタル料は@1,400.(月々)です。
今月は月の半分を過ぎていますから、1/2ヶ月対応となり、@700.。
購入するとなれば、約40万円前後はかかりますから介護保険のありがたさがわかります。
なお、金額はサービス事業者により異なることを補足しておきます。
お風呂に入れてあげたい!(前編) [介護]
現在、私が福祉用具(電動ベッドや車いすなど)をお届けしてお付き合いをさせていただいている方の中に、末期の癌で退院時に病院から半ば見放された方がいらっしゃいます。
昨年末、退院前に会った時は投薬治療の影響からか髪の毛は抜け落ち、癌患者独特の肌色をされており、目にまったく力を感じられなかった方(女性)です。
正直、初めてお会いした時は、そんなに永くはないだろうなあと感じていたのですが、ご主人の微笑ましいほどの献身的な介護のおかげか、ご本人の生きようとする気力の賜物か、春の検診では癌が小さくなり、今では車いすを手放して歩行器で歩かれています。
現在は訪問看護による身体チェックと、訪問リハビリによる脚部のリハビリを一生懸命続けておられます。
ご利用いただいている福祉用具としては、2モーターの電動ベッドと室内歩行器、それと段差のある玄関でご使用のリフトです。
これはご主人が非常に勉強熱心な方で、奥様が安全に生活できるためにはどうしてあげればいいかを考えられ、私に相談されて届けさせていただいた、ご主人にとって思い入れのある福祉用具なのです。
何度も見られたのでしょう、以前差し上げた福祉用具のカタログはあっちこっちに付箋が貼ってあり、かなり痛んでおりました。
福祉用具専門相談員としては、いろいろ迷ってお勧めせずによい、非常に“楽な”ケースかもしれません。
また少しでもスムーズに移動できるように、介護保険の住宅改修工事費の枠を超え、自己負担金が発生してでも段差解消の工事をされた、本当に頭が下がるくらいに奥様思いのご主人です。
そういうご主人の行動をつぶさに見ておられる奥様は、やっぱりがんばれずにはおられないのかもしれません。
家庭内単身赴任中(?)の私から見ると、永年連れ添った夫婦像のベストモデルとして表彰してあげたいくらいです。
そのご主人から、ボチボチ自宅のお風呂で温まらせてやりたい旨の連絡が入りました。
私は以前、どんな病気でも身体を温めておくのが一番良い治療法だという話を某医学部教授から聞いたことがありますが、ご主人はそのことを直感的に感じられて私に連絡されたようでした。
ただ、2年ほど前にリフォームされたユニットバスは深く、膝をほとんど曲げることのできない奥様が浴槽につかることは、介助をしてもらっても大変な行為となります。
真上から見てみますと、
これから日に日に涼しくなってくる季節、安全にゆっくりお風呂で温まって欲しいと願うご主人の希望に、私はどう答えることができるでしょうか?
ご主人と福祉用具のカタログを見ながら、また過去のケースの実例をあげながら、同時に浴槽のサイズを実測しながら、即答はできずに少し考える時間をいただくことにしてお宅を後にしました。
今、机の上にカタログや施工写真集を広げ、そして各メーカーに問い合せをかけながら考えています。
う~ん、どうするかなあ・・・・・・・・・。
お父さん、お母さん、ちょっと待っててね!
100円の値打ち! [介護]
「ベッドから車いすに、車いすからベッドに移らせたいんですけど、体重が重くて介護されているご主人が大変なんです。」
昨日の夜、CM(ケアマネージャー)からの電話です。
ご利用者さんは、まだ59歳の女性の方なのですが、パーキンソン病を患っておられて片足も切断され、要介護4の認定を受けておられます。
昨年の冬に訪問させていただいた時は、一人でゆっくりではありますがベッドの上で座位をとって車いすに移乗できたのですが、今日訪問させていただいたらかなり病気が進行しており、独力での移乗は無理な状態でした。
しかし、少しでも病気の進行を遅らせようと懸命にリハビリをがんばっておられ、また座ってご主人と話をしながら食事をしたいという思いがあり、なんとかスムーズに移乗できればというCMの意向です。
年齢が一回り上のご主人はすでに退職され、1日中奥さんの介護をされており、収入がありませんので生活保護を受けておられ、この上腰痛なんかで動けなくなると大変なことになってしまいます。
毎日ヘルパーさんが入っておられますが、介助はほとんどご主人がされており、加齢と病気の進行のためにそれもだんだん辛くなってきたとこぼされていました。(これが老老介護の実情です。)
先日、時々ブログでお会いしているCMのふみさんhttp://ameblo.jp/fumiiro18/entrylist.html も困っておられたことを思い出し、早速こんな板を持って事務所を飛び出しました。
サーフボードならカッコいいのですが・・・・・。
硬いポリエチレン製で、イージーグライドという名称の板です。
ベッドから車いすへ、または車いすからベッドへ、座ったままの姿勢で移乗するためのボードです。
表面は滑らかで、裏面には滑り止め帯がついていますので安全に移乗できます。(耐荷重約130kg)
4種類ほどサイズが出ていますが、だいたい出回っているサイズはMサイズのものが多く、購入すれば2万円くらいはします。
しかし介護保険では、特殊寝台(ベッド)の付属品として認められており、月額100円ほどでレンタルが可能なのです。
今朝まで、ご主人が奥さんを抱きかかえて移乗されていたのですが、このボードでいとも簡単に介助することができました。
この方はご自分で座位をとることができず、介助を受けながら移乗されましたが、独力で座位をとれる方なら移乗がかなり楽になります。
月額たった100円で、ご本人も介助される方も安全にそしてより楽になっていただける、こんな用具をもっと知っていただくことが大事なんだと再認識させられた仕事でした。
ふみさーん、みんなに教えてあげてネ!